ILCとは?
国際リニアコライダー(ILC)は、国際協力によって設計開発が推進されている次世代の直線型加速器です。
世界の100か国、1000を超える大学・研究機関から、世界トップクラスの研究者・技術者数千人が東北・北上山地に集まり、10年、20年と研究を続ける国際研究拠点となることが期待されます。
ILCのしくみは?
全長数十kmの直線状の地下トンネル(現計画は、標高約110m、全長約20km)内で、電子と陽電子(※1)を光速に近い速度まで加速させ、正面衝突させます。すると、宇宙誕生から1兆分の1秒後の状態がつくり出されます。ほんの一瞬、ビッグバン(※2)直後の状態が再現され、質量をつかさどる「ヒッグス粒子(※3)」をはじめとして、さまざまな粒子があらわれます。
これらの粒子を測定することにより、どのようにして宇宙や物質が生まれたのかという、人類が長年抱いていた謎の解明に挑むことができます。また、加速器技術の応用範囲は、医療・生命科学から新材料の創出、情報・通信、計量・計測、環境・エネルギー分野まで多岐にわたります。
ILC建設地の条件は?
最大で全長50kmの直線状の加速器用トンネルに加え、アクセス用トンネル、粒子測定器を収容する地下の大ホールが建設できる場所が条件です。
また、電子と陽電子の精密衝突のため、人工振動が少なく、活断層がない硬い安定岩盤にトンネルを建設できることが求められます。
ILCが建設されると
ILCが実現すれば、世界中から数千人の研究者とその家族が暮らすようになり、多文化が共生する国際都市が東北につくられます。私たちの身近なところに国際的な「知の拠点」が形成され、最先端の研究を見られることは、子どもたちの知的好奇心を刺激し、夢を与えることにもなるでしょう。
用語解説
※1 陽電子・・・・
電子の反粒子のこと。陽電子は電子と逆のプラスの電荷を持っている。
※2 ビッグバン・・・・
宇宙の始めに起きたとされる大爆発のこと。ビッグバン理論は今から約138億年前に起こった爆発(ビッグバン)によってこの宇宙が始まり、引き続く宇宙膨張の中で、素粒子や原子、分子、星、銀河が創られたという理論。
※3 ヒッグス粒子・・・・
水が海を満たすように宇宙を満たしていて、素粒子に質量を与えると考えられている粒子。ビッグバンの直後にあらゆる素粒子は質量を持っていなかったが、宇宙が膨張し冷えた段階でヒッグス場の海が形成され、素粒子はその海の抵抗を受けて動きにくくなり、その動きにくさが質量につながったと考えられている。